白衣の天使は、悪魔の小児外科医から子どもごと溺愛される
 ――久松先生は、心を許してはいけない人だ。

 数え切れないほど看護師に手を出した悪魔に、頭からつま先までを撫で回されて……。
 絆されるなど、絶対にあり得ない……! 

「穂波」
「呼ばな、いで……っ!」

 余裕なんて、なかった。
 その美声で私の名前を、呼ばないで欲しい。

 唇を噛み締めながら、彼を睨みつければ。
 久松先生は、手の甲に口づけた。

「俺はこれから、君だけのために動く。愛しき俺の天使に、忠誠を誓おう」

 何よ、カッコつけちゃって! 
 そんな甘い言葉で私の心を奪えると思ったら、大間違いよ……! 

 そう強がりながらも、約束を守るために彼を受け入れたのはいいけれど……。

「穂波」

 あの人の美声が名前を呼ぶたびに。
 私の意思に反して、身体は久松先生を求めて反応を示してしまう。

「君の乱れる姿を、俺に見せてくれ」

 大嫌いなはずなのに。

 こんな人と一つになったって、幸福な気持ちになれっこないと決めつけていたけど――。

「ああ……。俺の天使……最高だ……!」

 ――案外悪くなかったなんて、絶対に嘘だ。

< 9 / 43 >

この作品をシェア

pagetop