不器用な総長は元アイドルの姫を一途に愛したい
「いや、でも、そもそも斗和さんたちは先輩ですから、やっぱり呼び捨てはちょっと……。それじゃあ、恵那さんって呼ばせてもらいますね!」
「うん。それじゃあ私は……忍くんって呼んでも、いいのかな?」
「勿論!! 好きに呼んでください!!」

 忍は人懐っこく、笑顔も爽やかで可愛らしい。爽やかイケメン……という言葉が似合いそうな男の子で、そんな彼の笑顔に恵那の心は癒されていく。

「それじゃあ俺の事も名前で呼べよ。俺もお前の事は恵那って呼ぶから」
「う、うん、分かった……斗和……くん」

 流れで自分の事も名前で呼ぶよう言った斗和は、恵那が『斗和くん』と呼んだ事に難色を示す。

「斗和でいい。呼び捨てにしてくれ、頼むから」

 どうやら『くん』付けで呼ばれる事は慣れていないのかお気に召さないようで、呼び捨てで呼ぶよう訂正する。

「分かった。それじゃあ、斗和って呼ぶね」

 今まで異性を呼び捨てにした事が無かった恵那はちょっと戸惑いながらも、本人がそうして欲しいならと『斗和』呼びを承諾した。

「それはそうと忍、お前俺に何か用があったんじゃねぇの?」

 そもそも、忍が自分を探していた目的は何なのかを斗和が確認する。

「用っていうか、斗和さん全然連絡つかないからみんなで探してたんですよ! 【BLACK CROSS】の連中に健太(けんた)が捕まった上に、助けたいなら斗和さん一人だけだと名指して呼ばれたってメッセが来て、その後健太が助かった事は本人からのメッセで分かったけど、途中で別れたっていう斗和さんに呼び掛けても音沙汰無いし、電話も出ないし……心配したんすよ?」
「悪ぃ、連絡しようと思ってたんだけど、ちょっと疲れて休憩してたんだよ……」
「まあ、無事で良かったですけどね。ひとまず俺の方からみんなに連絡しますよ」
「ああ、頼むわ」

 そんな忍と斗和のやり取りを黙って見守っていた恵那は、話が一区切りつきそうなタイミングを見計らって声を掛けた。
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