不器用な総長は元アイドルの姫を一途に愛したい
「あの、その話って、もしかして昼間用事があるって帰った事と、関係があるの?」
「あー、まぁな」
「……誰かと喧嘩してたって、事でしょ?」
「色々あんだよ。こっちにも事情が」
「でも……そんな怪我する程の喧嘩なんて……良くないよ。しかも、一人で何人も相手にしたって事でしょ?」

 二人の会話から推測した恵那は斗和が一人で危険なグループの人間相手に喧嘩をしたと解釈し、その事を問いただす中、

「恵那さん、今日は仲間の一人が捕らえられてしまって、それを助ける為の喧嘩だったから斗和さんがここまで怪我を負っただけ。普段の斗和さんなら、怪我なんて負わないくらい強いんですよ!」

 忍が、どこか勘違いをしている恵那に補足して斗和がここまでの怪我を負った経緯を説明をした。

「おい忍、あんまし余計な事喋るんじゃねぇよ」
「あ、すんません」
「とにかく、俺はもう帰るから、忍から連絡頼むよ。俺はコイツ送ってくから」

 あまり詳しく聞かれたくないのか、忍に余計な事を話すなと釘を刺した斗和は、心配しているという仲間への連絡を任せ、自分は恵那を送っていくと口にする。

「え? いいよ、送ってもらわなくても……それより早く病院に行って傷、診てもらってよ」
「そんな怪我して送るのは大変だろうし、恵那さんは俺が送っていきますから、斗和さんは早く帰ってください」

 斗和の言葉に、恵那は自分を送るくらいなら病院に行けと言い、忍は自分が恵那を送ると言い出した。

 けれど、

「いや、送るのは俺が適任だから忍は気にすんな。お前も帰り、気をつけろよ。恵那、帰るぞ」

 斗和が恵那を送るのには何か理由があるようで忍の申し出を断ると、恵那には有無を言わさず共に帰るよう声を掛け、忍も恵那もそれ以上何も言う事をせず、素直に従った。
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