不器用な総長は元アイドルの姫を一途に愛したい
「ねぇ斗和」
「ん?」
「……さっき忍くんと話してた事だけど……【BLACK CROSS】って何?」
「んな事、お前は知らなくていいんだよ」
「でも、気になる……」

 帰る道すがら、恵那はどうしても先程の忍と斗和の会話が気になっていたようで改めて話題に出すと、始めは教える事を渋っていた斗和は、はぁーっと深い溜め息を吐いた後、

「……【BLACK CROSS】――奴らの事は【クロス】って呼んでる。この県を始め、ここ数年は近隣の県にも拡大してる、暴走族のチームだ」
「ぼ、暴走族!?」
「ああ。俺や忍も、前はクロスの一員だった」
「え!?」
「けど総長が交代してからクロスは変わった。とにかく悪質なチームに変わっちまったんだよ。俺はそれが納得出来なくて、クロスを抜けた。忍の他にも数人、俺と抜けた。それから俺らはクロスに対抗するように、新しいチーム、【プリュ・フォール】を作った。そんで俺が、フォールの総長だ」
「斗和が、暴走族の、総長?」
「ああ。他のチームに比べりゃ、まだまだ弱小だけど、メンバーも増えてるし、俺はこれからもっと大きいチームにしようと思ってる」

 気になって聞いた恵那だったけれど、まさかそんな話だったとは思いもせず、しかも斗和が暴走族の総長だと聞いて心底驚いていた。

「ま、そんな訳で俺は学校でも町でも、よく思われてねぇし、周りも距離を置いてる。お前はこの町に来たばっかだし、俺と居るとろくな事にならねぇから、俺とは居ない方がいい。つー訳で、俺にはもう構うな。それじゃあな」

 そして、丁度話が終わったタイミングで恵那の家に辿り着いた事もあり、斗和はそれだけ言って少し先にある自宅へ歩いて行こうとするけれど、

「待って!」

 そう叫んだ恵那は、斗和の腕を掴みながら呼び止めた。
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