不器用な総長は元アイドルの姫を一途に愛したい
「勿論です! 恵那さんの事は俺らも気をつけます!」
「そうっすよ! 当たり前の事です!」
「みんなで恵那さんを守りましょう!」

 恵那を守るという使命感が生まれたメンバー一同は口々に言いながら一致団結して盛り上がっていく。

 その光景に安堵した斗和はすぐ横に控えていた忍に声を掛けた。

「忍」
「何ですか?」
「お前には、俺や恵那となるべく行動を共にして欲しい。アイツもお前には一番心を許してるっぽいからな」
「俺ですか? 勿論、俺で良ければやらせて下さい」
「二人で居るより三人で居る方が変な噂も無くなるだろうし、頼むわ」
「了解しました」

 こうしてメンバーには常に恵那を気にかける事、何かあれば率先して守る事を周知するのと同時に忍には自分や恵那と可能な限り行動を共にするよう頼み、ありとあらゆる危険から恵那を守る手筈を整えていた。

 それから暫く、噂は思わぬ形に変化を遂げる。

「なぁ、えなりんって今度は針ヶ谷と、付き合ってんだろ?」
「マジかよ? 針ヶ谷って江橋が一番可愛がってる後輩だろ?」
「まあでも、江橋よりはマシかもなぁ」
「だな、ぶっちゃけ針ヶ谷(アイツ)って不良っぽくねぇし、どうしてプリュ・フォールのメンバーなのか分からねぇもんな」
「確かに、言えてる」

 なんて噂が恵那たち三年生の間で持ち切りになり、そこから二年、一年生へと広まり、気付けば噂は更に変化を遂げ、忍が斗和から恵那を横取りしたという話になっていた。

 勿論、それは根も葉もない噂だし、当の本人たちは全く気にしてはいなかったのだが、斗和相手だと怖くて何も出来なかった隠れ恵那ファンから忍が嫌がらせをされるようになっていたのだけど、忍はそれを斗和や恵那には隠していた。

「何か、ごめんね、最近また変な噂が広まってて……」
「いや、全然! まあデマだけど、それでも恵那さんと付き合ってるなんて噂、寧ろ凄く光栄ですよ!」
「もう、忍くんってば……」

 昼休み、いつもの様に屋上でお昼ご飯を食べていた恵那たち。

 斗和はというと、担任から呼び出されて渋々ながら職員室へ行っていた。
< 21 / 56 >

この作品をシェア

pagetop