不器用な総長は元アイドルの姫を一途に愛したい
「あの……私のファンだっていうのは……それは素直に嬉しいです……ありがとう」
「…………」
「だからこそ、私の事が嫌いになって嫌がらせの手紙を出したのなら、それはそれで構いません。アイドルの私と今の私は違うから幻滅させてるのかもしれないし、嫌いになられても仕方の無い事だと思っているので……」
「……俺は別に、恵那の事を嫌いになった訳じゃない。今でも好きだ。この町に来ると知って、凄く嬉しかった! それなのに……何でこんな不良と仲良くなるんだよ!? 恵那にとってイメージが悪いだろ? 俺はそれが気に入らないんだよ!」

 どうやら柊木は恵那が斗和たちと仲が良い事がどうにも気に入らないようだった。

「……イメージって、何?」
「は?」
「私は今、この町にいる普通の高校生です。アイドルじゃない。イメージなんて、関係無いです」
「いやいや、休養中だろうと、この町に居ようとファンからしたら恵那はアイドルのままなんだよ! こんな不良たちと一緒に居たら噂になって、戻った時にイメージが悪くなるに決まってるだろ!? なあ、頼むからこんな奴らと一緒に居るのはやめてくれよ!」

 どうしても納得のいかない柊木は恵那に近付き触れようとする。

「テメェ、それ以上言うな。近付くな。恵那は恵那。アイドルだろうと何だろうと、他人がプライベートにまで口出しする権利はねぇんだよ。コイツがしたい事を尊重するのが、本当のファンなんじゃねぇの? お前のはただ、テメェの願望を押し付けてるだけだ。いいか? 金輪際コイツに関わるんじゃねぇぞ? もし次コイツや俺らプリュ・フォールに何かしたら、ただじゃおかねぇからな」

 恵那を庇い割って入った斗和によって阻まれ、睨み付けられながらこれ以上は何もしないよう念を押された柊木は押し黙った。

 そして、そんな柊木に恵那も、

「……こんな私のファンでいてくれてありがとう。だけど、私はきっともう、期待には応えられないです。ごめんなさい。私の事を嫌いになるのは構いません、罵られても、陰口を叩かれても構わない……だけど、私以外の人に何かをするのはやめてください。祖父母やプリュ・フォールのみんなは関係無い。一緒に居てくれる斗和や忍くんの事を悪く言うのもやめて。私は、自分が居たいと思う人の傍に居るだけ。それは誰に何か言われても、変わらないから」

 自分の思いを伝え、これ以上自分以外の人たちに危害を加えるのを止めるよう訴え掛けた。
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