不器用な総長は元アイドルの姫を一途に愛したい
「そりゃ、お前が来てからほぼ毎日一緒に行動してるから、寂しいんじゃねぇの?」
「……そっか」
「で? 答えは出たのか?」
「……ううん、まだ」
「恵那、お前は何でそんなに悩む? 本当はやりたいんだろ、アイドル」
「…………そう、なのかもしれない」
「だったら――」
「でも! 私……怖いの」
「怖い?」
「また同じような事になるかもしれないし、グループを解散してソロになるときっと、好奇の目に晒される事になる……それに……アイドルに戻ったら……もう斗和と、一緒に居られないから……」
「まあ、確かに。お前がこの町から出てってアイドルに戻れば、俺らはもう会う事もねぇだろうな」
「違っ、私は別にそんな事を言ってる訳じゃないよ? 毎日一緒に居られなくて淋しいって言ってるの。もう会う事も無いなんて、どうしてそんな事言うの? 私がこの町に来ればいつでも会えるじゃない……」
「馬鹿だな。アイドルが俺らみたいな奴らと繋がりあるって知れたら色々面倒だろうし印象も悪いだろ? もう会わねぇ方がいいに決まってる。お前がこの町から出てくって決めるなら、俺らはもう二度と、会う事もねぇよ」
「……そんな……っ、斗和はそれでいいの? 私は嫌だよ……もう二度と会えないなんて……そんなの、嫌だ……そんなんだったらアイドルになんかならない! もう本当に引退する!!」

 恵那の素直な気持ちだった。

 斗和と会えなくなるくらいならばアイドルなんて辞めてやる。それくらい、恵那にとって斗和の存在は大きかった。

 だけど、そんな恵那の言葉を聞いた斗和は、

「お前は俺と会えなくなるからアイドルを辞めるのか? それじゃあ、アイドルになっても会いに来て良いって言えば、アイドル続けるのか? 何だその理由。そんな中途半端な気持ちなら、もう辞めちまえばいいんじゃねぇの? 俺がどうこうじゃなくて、自分がやりたいようにやれよ。今のお前には自分ってモンがねぇのな。正直ガッカリだよ」

 冷めた瞳で恵那を見据えながら言葉を吐き出すと、

「忍に連絡しとくから、アイツに送って貰え。じゃあな」
「と、斗和……」

 スマホを片手に立ち上がり、電話を掛けながら恵那を振り向く事無く去って行ってしまった。
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