不器用な総長は元アイドルの姫を一途に愛したい

「恵那さん」
「……忍くん……ごめんね、わざわざ来て貰っちゃって」
「いえ、そんな事は全然いいんですけど……斗和さんと、何かありました？」
「……うん、ちょっと……」

　暫くして、斗和から恵那を送るように言われた忍が河川敷へやって来たのだけど、声を掛けにくいくらいに恵那の表情は暗く、落ち込んでいた。

「あの、俺で良かったら話聞きます！ もし、話せる事なら話してください。力になれる事も、あると思うんで」

　恵那のあまりの落ち込みようを見兼ねた忍がそう声を掛けると、

「……それじゃあ、少し、聞いてもらってもいいかな？」
「はい！ 勿論です！」

　そう恵那に言われ、忍は彼女の横に腰を下ろして話を聞く事にした。

「……この前、マネージャーが私の所へ来て、戻って来て欲しいって言ってたでしょ？」
「ああ、はい。言ってましたよね」
「それで、私としては確かにソロ活動っていうのは魅力的ではあるんだけど、グループ解散ってなると色々噂されるだろうし、また好奇の目に晒されるのが怖いと思っちゃう。それに、この町での生活も慣れて楽しく過ごしているから離れ難いっていう思いもあって、悩んでるの」
「そうですか……。うーん、難しい問題ですね。ファンの一人としては、恵那さんがまたアイドル活動をしてくれるのは嬉しい限りですけど、今みたいにこの町で一緒に過ごせるのも嬉しいですし……」
「そう言ってくれて嬉しい。ありがとう……」

　忍の言葉に恵那の表情は若干和らいだものの、まだどこか翳りがある。