不器用な総長は元アイドルの姫を一途に愛したい
「斗和!」
「うわっ!? 何なんだよ、いきなり……」

 恵那がやって来たのは斗和の部屋。

 家には彼の祖父がいるので、一言断って部屋へと上がって来たのだ。

 ベッドで寝転んで漫画を読んでいた斗和は、恵那の突然の訪問に驚いている。

「ご、ごめん……」
「……別にいいけど……どうした?」

 驚かせてしまった事を謝る恵那に気にしてないと伝えた斗和は、ベッドに座り直すとここへ来た理由を尋ねた。

「……あの、ね……私、決めたの! これからどうするか決めたから、一番に斗和に聞いて欲しくて……」
「……そっか。まあ、座れよ」
「うん……」

 恵那の表情から真剣さが感じられた斗和は、話を聞く為自身の横を指差して座るよう促すと、恵那は頷き斗和の横に腰を下ろした。

「それで、どうする事にしたんだ? アイドル、続けるのか?」

 そして、アイドルを続けるのかという斗和の問い掛けに恵那は、

「……ううん、アイドルは……っていうか、やっぱり芸能活動はもう、辞める事にしたの」

 斗和を真っ直ぐに見据えながら、芸能活動を正式に引退する事を告げた。

 それを聞いた斗和は驚いているようだったけれど、少し間を置いて更に問い掛けた。「お前はそれで、本当に後悔しないのか?」と。

「うん、しないよ。私ね、誰がどうとかじゃ無くて、自分はこれからどうしたいのか、海老原 恵那として、どういう人生を生きていきたいのかをきちんと考えたの。それで、私がこれから先、一番したいなって思ったのは…………斗和の隣に、居る事だったの」
「なっ…………」

 恵那の言葉に驚きを隠せない斗和は目を見開いて言葉を詰まらせるも、そんな斗和に構う事無く恵那は、

「……斗和……私ね、斗和の事が好きなの。斗和と一緒に居る時が一番自分らしく居られるの。だから、これからも傍に居させて欲しいんだけど……駄目、かな?」

 胸に秘めていたありのままの気持ちを、伝えたのだ。
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