不器用な総長は元アイドルの姫を一途に愛したい
 そんな恵那の告白で一瞬の沈黙が訪れる。

 斗和の答えを待つ恵那は、恥ずかしさと不安から彼を直視出来ずに俯いている。

 そんな恵那を前にした斗和は、

「――駄目な訳、ねぇーだろ。つーか突然過ぎるんだよ、お前……」

 照れている顔を見られたくないらしく、恵那の身体を引き寄せると、そのまま包み込むように抱き締めた。

「……つーかさ、お前は本当に、それでいいのかよ? 俺はプリュ・フォールの総長で、周りからは白い目で見られてる。これから先、この前みたいな危険な事に巻き込まれる事だってあるんだぜ? それでも、俺と居たいって言うのかよ?」
「周りがどう思うかなんて、関係無いよ。私は斗和と居たい、ただ、それだけなの。それに、危険な事があっても斗和が守ってくれるでしょ? だからね、大丈夫! あ、でも私も自分の身くらい守れるようになった方がいいのかな? それならいっその事空手とか習おうかな?」

 斗和の心配をよそに、恵那は笑顔で『大丈夫』と口にすると、守られているばかりでは駄目かと強くなる方法を考え始めていた。

 そんな恵那に斗和は、

「……本当、お前って変わってるよな。それじゃあ、ずっと居ろよ」
「え?」
「好きなだけ、居ればいいって。俺も、お前と居るのは……嫌いじゃねぇからよ」
「斗和……」

 恵那としては人生初めての告白で、斗和がどんな返事をくれるのかとドキドキしていたのだけど、『好き』とは言わないところが逆に斗和らしい、そんな気がして思わず笑みが込み上げる。

「……うん、それじゃあ、ずっと、傍に居るね」
「……ああ」

 好きとは言われなかったけど、それでも斗和の気持ちが伝わった恵那の胸は嬉しさでいっぱいだった。
< 51 / 56 >

この作品をシェア

pagetop