不器用な総長は元アイドルの姫を一途に愛したい
 職員室を出た斗和は先程担任から見せられた内容を思い返していた。

(……これはクロスの連中の仕業なのか……?)

 BLACK CROSSを抜けてからというもの、反発していると見なされてこれまでも数々の嫌がらせや喧嘩を吹っかけられてきたプリュ・フォールの面々。

 しかし、今回のはこれまでのものとは違い、他人を巻き込んだ犯罪事件にまで発展している訳で、それを自分たちのせいにされているとあっては到底見過ごす事が出来ない。

 それに、いくらBLACK CROSSが悪質なチームに変わってしまったと言っても、果たしてここまでの事をやるのか、あちらのチームの面子を知っているだけに、断定が出来ない斗和は珍しく頭を悩ませていた。

「恵那、待たせたな」
「斗和!」

 教室に戻って来た斗和は自分の席でスマホを弄っていた恵那に声を掛けると、満面の笑顔を向けながら斗和の名前を呼んだ。

 たったそれだけの事なのだけど、そんな彼女を前にした斗和の表情は一気に緩む。

「先生、何だって?」
「あー、まあいつもの事だよ」
「そうなの?」
「ああ、だから気にすんな」

 斗和は恵那に先程の事を話すか迷っていた。

 けど、話せば心配を掛ける事になるし、また一人で突っ走るかもしれないという事を懸念した斗和は、ひとまずより詳しい内容が分かるまでは恵那に話さない事を決めてはぐらかした。

 二人並んで通学路を歩いていると、ふいに恵那が、

「ねぇ斗和、今週末、予定ある?」

 週末の予定の有無を問い掛ける。

「別に、これと言って予定はねぇけど?」
「本当!? それじゃあさ、映画観に行かない? ちょうど今週から始まるんだ」
「映画? ホラーか?」
「違うよ。恋愛もの」
「恋愛……俺、そういうの苦手なんだけど」
「そうだろうなって思ったけどさぁ、一緒に行って欲しいな……だって、私たち付き合ってからデートらしいデートってあんまりしてないじゃない? 映画デート、定番だし……」

 二人は家が隣同士とあって、休みの日は大抵どちらかの部屋で過ごすか、プリュ・フォールの集会で河川敷や誰かの家に集まるかであまり出掛ける事が無い。

 そもそも映画や買い物となると隣町まで行かなくてはいけない事もあって、自然とそうなってしまうのだ。
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