不器用な総長は元アイドルの姫を一途に愛したい
「それはそうと、どうしてこんな事に? 喧嘩?」
「……まあ、そんなとこ」
「……良くある事って言うけど、こんな怪我をいつも?」
「今日はちょっとヘマしただけだって。相手が予想より多かったからやられた、それだけだ」
「……どうして、そんな危ない事するの? この怪我だって、大した事ないって言うけど、痛いでしょ?」
「痛くねぇって」
「嘘! さっき私が触ったら痛がったじゃん」
「あれはお前の力が強かったんだよ」
「……それは、ごめん……」
「だから別に気にしてねぇよ。つーか、本当、その顔止めろって。そういう顔されると、俺が何かしたみてぇに見えるだろうが」

 またしても恵那が悲しげな表情を浮かべた事を斗和が指摘すると、非難されたように感じたのか更に落ち込んでいく。

「……ごめん」
「――だから、別に怒ってるわけじゃねぇよ。ただ、そういう顔されると、どうすればいいか分らねぇんだよ。とにかく、いちいち落ち込むな」
「……うん」

 何だか気まずい空気が流れてしまい、どちらもそのまま黙り込んでしまった、そんな時、

「斗和さーん!」

 どこからか斗和を呼ぶ声が聞こえて来て、その声の方に恵那が視線を向けると、

「斗和さんこんな所に……って! え? ええ!? もしかして、キミ、えなりん!?」

 二人の元へやって来たのは、明るい茶髪でナチュラルマッシュスタイルの人懐っこそうな男の子で、恵那たちと同じ学校の制服を身に纏っていた。

 そんな彼は恵那の姿を見るなり目を見開いてそう叫んでいた。
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