残念すぎるイケメンが、今日も今日とて私を溺愛する。
「では、学生らしく勉学だけに励んで来てくださいね」

「ハイハイ。ありがとう、いってきます」

「お気をつけて」


学校……ではなく、学校付近の人気が少ない路地に降ろしてもらって、徒歩で学校へ向かう。


「藍里さ~ん」


その声に振り向くと、わざわざ車から降りて両手を全力で振っている西嶋がいた。


「いい子にしててくださいね~」


いい子にってどういうことだよ……。

全く、いい歳こいた大男があんな全力で手なんて振っちゃって、馬っ鹿じゃないの……とは思うものの、どこか憎めないっていうか、可愛いっていうか……。

自然と顔が緩んでしまう。

『じゃーね』と口パクをして適当に手を振ると、デレデレしながらウインクして指ハートをしている西嶋。

私の緩んでいた顔が、スンッとなったのは言うまでもない。

指ハートは見なかったことにして先を急いだ。


「相変わらず“残念すぎるイケメン”」


──── 嫌いになれたら、諦められたら、どんなに楽なことか。


何度も何度もそう思った。

でも、嫌いになることも諦めることもできなくて、もう10年も経ってしまった。



「──── 全部、やめられたらいいのに」



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