残念すぎるイケメンが、今日も今日とて私を溺愛する。
──── 高校生活最後の夏休み。
梅雨が終わり、いよいよ本格的な夏を迎える。
風鈴が風に吹かれてチリンッ、チリンッと涼しげな音を奏でるのと同時に、ミーンミーンとミンミンゼミが鳴いて蒸し暑く感じる。
「藍里~。荷物届いたわよ~」
「はーーい」
玄関の方からお母さんの声が聞こえる。
・・・・あれ、今……西嶋いるっけ?
「……やっっば!!」
私は慌ててお母さんのもとへ向かった……が、時すでに遅し。
「藍里さん。そんなに慌ててどうしたんです?」
私の荷物を片手に、何か言いたげな西嶋が居間に鎮座していた。
お母さんはクスクス笑ってどっか行っちゃうし……。
「これは?」
─── 言えない。『クラスの子達と海へ行くために水着を買った』……なんて、口が裂けてもコイツにだけは言えない!!というか、言いたくない!!というより、言っちゃいけない!!
「あ、えっと……あの、それはっ……」
「キョドりすぎですよ、藍里さん」
「べっ、別にそんなことないし」
「へえーー。怪しいですね」
完全に疑いの目をしている西嶋に凝視され、冷や汗が止まらない私。
「ふ、服。服よ、服」
「へえーー。『服』ねぇ。ただの服にそんな焦る必要あります?」