暗闇の星屑、夜明けの太陽 〜番外編〜
「セイも来た?」



「うん、来たよ」



イズミちゃんは?

そう聞きたかったけど
イズミちゃんのさっきの話を聞いた後で
聞きづらい



「3人揃うことって
もぉなかなかないかな?」



「オレも引っ越し落ち着いたら
実家に顔出すよ」



実家にイズミちゃんも来たりするのかな?

それも聞けない



「新しい学校、大変だね」



「うん、慣れるまで疲れるだろうな…」



「クラスに問題児いないといいね」



「オレのクラスはみんないい子だから…」



ハルって、すごいね

毎年何らかの問題はあるのに
みんないい子…なんて…



イズミちゃんが警察に補導された時も
大変だったよね

退学にならないように
大学に行けるように
一生懸命だった



あれは愛情かな

教師と生徒の関係以上に
一生懸命だった気がする



「今度は1年生を受け持つんだけど
入学してきた子全員を3年後卒業させたい」



そんな気持ちで教師をしてるハルを
見習いたいと思う



「ハルのおかげで
イズミちゃんも無事大学生だしね」



つい名前を出しちゃった



「オレのおかげとかじゃないよ
月島、頑張ってたから…
受験勉強みてくれたエミには感謝してる」



「なんか保護者みたいだね、ハル」



保護者っていう言葉は
ちょっとしたヤキモチだったかもしれない

イズミちゃんの彼氏って
まだ認めたくない私がいる



「保護者じゃなくて
せめて担任て言ってほしい」



「もぉ担任じゃないじゃん…」



「そーだけど…」



「保護者でもないね
彼氏か…」



ハル

今の言葉言うのに
私がどれだけ頑張ったかわかんないでしょ



「ぜんぜん彼氏ぽくないけどね」



うん、いろいろ聞いた

自分でもわかってるんだね

もぉちょっと頑張ってあげたら?



「イズミちゃんもここ来てるの?」



「あー、毎日来てる」



毎日?

イズミちゃんなかなか頑張ってるじゃん



「それで片付けが進んでないんじゃない?」



「月島も結構手伝ってくれてるよ」



「とか言って…
イチャイチャしてるんじゃないの?」



してないのはわかってる

ハルを意識させる作戦



「してないよ」



うん、知ってる?



「あ、もしかして泊めたりしてるの?
これから大学生なんだから
避妊はちゃんとしてね!」



キスもまだなのに
まだまだ先の話だろうけど



「泊めてもいいのかな…?」



「え?
それは家主の方に任せますけど…」



今度は、元カレに相談されちゃった



「ベッドもひとつしかないしさ…」



そりゃそ~でしょ

2個あったらおかしいわ



「片付いたらソファー買えば?
ハルがそこに寝なよ」



「一緒に寝なよ」
って、わざと言ってあげない



「ボーナス出たらソファー買うよ」



ボーナス出るまで泊めないんだ

どれだけ真面目なの?



イズミちゃん
大切にされてるな…



「ハル
私のこと、大切だった?」



「なに?今更」



「今更だから、聞きたい」



「うん、大切だったよ」



ハルの声はいつも優しい

この声が聴きたかった



「今も大切だけど…」



慌ててそう付け加えたハルを見たら
目が合った



ずっと私を見守ってくれてたこの目は
真面目で嘘が付けないって知ってる



「イズミちゃんのことも大切にしてね」



「うん、もちろん
エミより大切にする」



そう言って
いたずらっ子みたいに笑った



もちろん嘘じゃないのはわかってる



冗談みたいに笑ったのは
ハルの優しさ



「ハル
誰にでも優しくしてると
勘違いされちゃうよ」



「勘違いって?」



相変わらず鈍い



「あと…
イズミちゃんを大切にするのはいいけど
あんまり大切にしすぎるのもね…」



「どういう意味?」



「大学にいってカッコいい先輩とかいてさ…」



「それはオレも心配」



へー…心配してるんだ



「じゃあ、ちゃんとしるしでも付けとけば?」



「しるしって?」



鈍い

鈍すぎる



「名前でも書いとけ!」



「まー、名前書いてないとテストも0点だしな」



アホか…



イズミちゃん
キスはまだまだ先になりそうだよ

頑張って!

先生は応援してます



< 14 / 56 >

この作品をシェア

pagetop