暗闇の星屑、夜明けの太陽 〜番外編〜
プロポーズ? セイ
「わざわざ引っ越さなくても
実家から通えるんだろ」



オレの双子の兄ハルが
実家を出た



「オレも自立したいと思ってたし
いい機会だと思って…」



兄は高校の教師をしていて
春から勤務先が少し遠くなるらしい



「なに?
オレが実家戻るから?」



オレは高校を中退して始めたホストを辞めて
実家に戻った



「それはない」



「こんなに本いる?
こんな狭いアパートなのに…」



オレが住んでたマンションとえらい差



「仕事で使うやつだから…」



「よかった、オレ
教師にならなくて…」



「やり甲斐のある仕事だけどね…」



この狭いアパートで
荷物に埋もれながら話すハルを見て
絶対ムリって思った

どぉ見ても、考えても
給料に合ってない仕事をしてるはず



ホストの方がずっと楽に稼げて
楽しいと思うけどね



「可愛い子いっぱいいるから?
オレもやるならやっぱ高校の教師かな…
女子校がいいな…」



そうは言ってみたものの
女の子はもぉしばらくいいかな…



「セイは、なんでホスト辞めたの?」



「んー…モテすぎて疲れちゃった
十周年パーティーで区切りをつけた」



この10年を振り返ると

ホストって楽でもなく
楽しくも…なかったかもな…



「10年も続けたって凄いな
すぐ辞めると思ってた」



「先生に褒められるとは思ってなかった
きっかけは
エミを守るためだった」



エミはハルにフラれた頃から
ホスト通いをやめた

そしたらオレもホストでいる意味がなくなる



「ハルもそぉでしょ
エミと付き合ったのって
エミを守るためだっただろ」



高校の時
エミのホスト通いが始まって

オレはエミを守るために
高校を中退してホストになった



ハルはエミの彼氏になって
エミを守ろうとした



幼馴染の変な関係

浅はかな考え



あの時は3人とも若かったな…

バカだったな



「ハル、エミのこと好きだった?」



「んー…好きだったよ」



「へー…
それは幼馴染として、じゃね?」



「さー…どぉだったかな…」



エミがホストに夢中になってなかったら
オレ、ホストになってなかったよ

高校中退してなかったよ



きっとふたりみたいに大学いって…



オレの人生返せ!

エミに責任とってもらいたい



「オレがこれから
エミと付き合うって言ったら?」



「エミのこと、よろしくお願いします」



「それ、元カレが言うセリフじゃないし…
父親かよ」



兄はオレに似てない

兄みたいな誠実な人が
エミには相応しいのかもしれない



「就職いいところありそう?」



「んー…まぁ…
ホストやってた時の人脈で
なんとかなりそう」



オレもこれからちゃんと就職して
そしたら家庭とかもてるかな?



「いいところ決まるといいな…」



こんなオレにもハルは優しい



「ハルは?
次の彼女作る予定は?」



「んー…」



「安定した仕事もしてるわけだし
相手いれば結婚とかさ…
オレは無理かもしれないから
親に孫見せてあげてよ」



「んー…
オレもそうしたいけど
何年先になるか…」



「やっとエミと別れて少し遊びたいしね
高校教師なんて選び放題じゃん!」



「仕事は失いたくない」



「真面目だな…バレなきゃ…

あ…あの子どーした?
卒業できた?」



「…」



優しいハルがオレを無視した

確かにあの時は迷惑かけたけど…



オレがお客さんにした子が
たまたまハルのクラスの子で

パパ活紹介したら警察に補導された



もしかして…退学とか?



「結構かわいい子だったよね
困ってたら仕事紹介するよ
もちろん今度はちゃんとした…」



「4月から大学生だよ」



「え…なんだ、卒業できたんだ
しかも大学生って…良かった〜
ちょっと責任感じてたからさ」



「頑張ってたよ」



「頑張り屋さんだもんね
なんだっけ…あの子
名前…なにちゃんだっけ?」



「もぉいいよ」



名前も覚えてないって
オレってホントにサイテーだな



「えっと…ツ…ツキちゃん!
ツキちゃんだ
ツキちゃん元気かな?」



「もぉ呼ぶな!」



「え…」



今のハルの声
怒ってたよね?



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