暗闇の星屑、夜明けの太陽 〜番外編〜
「いただきまーす」



結局オレがうどんを茹でた



「んー…おいひー」



ダンボールが積んであって
やっと座れる部屋でうどんを食べる



「大事な書類とかあるから、こぼすなよ」



「うん
おかわりある?」



「ない
月島のぶんは考えてなかった」



来ると思ってないし
入れたらダメだろ

勝手に入ってきたわけだけど

まだ教師と生徒



「今日、ハルちゃんメガネしてないね
ちゃんと見えてる?」



そう言って月島がオレに顔を近付けた



「あー…伊達メガネだからね」



「アレ、伊達メガネだったの?
なんの為に?」



「先生ぽく見えるかな…って…」



「先生ぽく…なかったよ」



だからオレはクラスの生徒に
ハルちゃんて呼ばれてた



「次の学校ではメガネの形変えようかな…」



「そういう問題でもないと思うよ
今日は?
今日はメガネしなくていいの?」



「うん、今日は先生じゃないし」



そう言ったら
月島がオレの顔を覗き込むように近くなった



可愛いな



マズイ…



「ちゃんと見えてるから
離れなさい」



慌てて月島からオレが離れた



今日は先生ではないけど
こういう状況はよくない

卒業したって3月末までは
生徒なんだから



月島はついこの間
高校を卒業した

春から大学生になる



「ハルちゃんの新しい学校って
ここから近いの?」



「うん、車で10分ぐらい」



オレは転勤に伴い実家から出て
独り暮らしすることにした



「へー…
私の大学も近いんだよね
運命かな?」



決して生徒と関係を持ったせいで
転勤になったわけじゃない



オレと月島は別にまだ…



「ハルちゃんの車でドライブ行きたい」



「それは…」



「せっかく春休みだし…」



「あのさ…
こーゆーのよくないと思うんだ
一応、3月いっぱいは生徒なわけだし
ちゃんと月島のお母さんに挨拶してから…」



「挨拶って結婚の時じゃないの?」



「結婚…
それはそれでその時はその時で…
ちゃんと許可を…」



「許可って?
それでダメだって言われたら?
ハルちゃんは諦められるの?」



「んー…それは…」



「付き合うのにいちいち親の許可なんか取ってる
友達いないけど…」



高校生同士なら別に何の問題もない



オレと月島は
立場とか年齢とかいろいろ

賛成多数ではない関係だと思う



「今日送って行くから
その時、挨拶するよ」



「お母さん寝てるかも…」



「そんな遅くならないうちに送る
月島は後悔ない?」



「後悔って?」



「オレで…」



「ん?」



首を傾げる月島は本当に可愛くて
この子の1番いい時をオレが奪っていいのか…

不安になる



「 帰りまで考えていいよ
気が変わったら…」



「ごちそうさまでした!」



月島がオレの話を遮った



月島の気が変わったら
オレは月島を諦められるのかな?



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