暗闇の星屑、夜明けの太陽 〜番外編〜

ハルは新学期で忙しいのか
実家にはずっと帰って来なかった



「セイ、仕事まだ決まってないの？
あっという間に30なっちゃうよ」



幼馴染のエミに釘を刺された



「ね…
ホストしかやったことないからさ…」



「やりたい事とか夢とか
言ってらんない年齢になってきてるからね」



わかってる

わかってるけど…



「オレも先生になろーかな…」



「これから大学いって？」



「オレも大学いっとけばよかったな…」



「なんでホスト辞めたの？」



「それハルにも聞かれた
エミはオレにホスト続けといてほしかった？」



「セイには合ってたんじゃない？
No.1だったんでしょ」



エミは知らない

なんでオレが高校中退してホストになったか…



オマエのせいだし！

頼まれたわけじゃないけど…



No.1になるために努力したのも
エミのお気に入りのホストが
ライバル店のNo.1になったからだ



「いつまでもNo.1でいれないしさ
No.1て結構しんどいんだよ
落ちた時に辞めるより
No.1のまま辞めたほうがカッコいいじゃん」



カッコつけてそう言ったけど

エミがホスト通いやめたら
もぉ意味なくなったから



だから辞めた



「エミは？
なんでホストクラブ行かなくなった？」



「私もそろそろ落ち着こうかな…って」



「落ち着くって？
結婚とか考えてんの？」



「具体的には考えてない
貯金もないし…
フラれたし…」



「ねぇ、エミ、子供何人ほしい？」



「なに？いきなり
まだ結婚してないけど」



「うん、そーだけど…
オレ子供好きでさ
学校の先生じゃなくて
保育園の先生やろうかな…って」



「セイが保育園の先生？
保護者と不倫とかしそうで怖い」



「それ？
結局、保育園の先生も学校行かなきゃ難しい
で！考えたんだけど…」



「余計なこと考えてないで
真っ当に仕事探しなよ」



「余計なこと…ではない
これから言う事は
本当に真面目な話だから、ちゃんと聞いて」



「なに？」



「エミ、オレの子供産んでくれない？」



「は？なにそれ
自分の立場わかってる？
ふざけてる場合じゃないよ」



「うん、ちゃんとわかってる
冗談とかじゃなくて、真面目な話」



「それ、ただ私とやりたいだけ？
キモ！
よくそれでNo.1ホストなれたね
サイテー！」



「もぉNo.1ホストでもなんでもない
ちゃんと仕事する
オレの仕事が安定したら考えてよ
お父さんになったら
もっと仕事頑張れるだろうし…
オレ、真剣だよ」



「え…なに？
お父さん？
誰が？」



「オレ」



「それって…誰がお母さん？」



「今の話の流れだと、エミだね」



「え…お母さん…？
え…お父さん？」



「うん」



「え…ヤダ
ヤダヤダヤダヤダ
私、私を愛してくれてる人と結婚するから」



「もちろん！エミ…愛してるよ」



「ホストって簡単に言うよね
そーゆー事」



「だから、もぉホストじゃないって
…
ただの、エミんちの隣に住んでる人
…
物心ついた時からエミを守らなきゃ…って
男心に思ってた人のひとり
…
もぉひとりは最近彼女ができちゃったらしく
オレがひとりで守らなきゃって思ってる
…
一生エミを守る
一生、愛してるよ、エミ」



コレは冗談でも嘘でもなくて
全部本当のこと



でも、言ったあと
自分でもちょっとキモいな…て思った



でも真剣に考えたことなんだけどね