暗闇の星屑、夜明けの太陽 〜番外編〜
また夢をみた



なんだろう…

優しい気持ちになる



いい夢だった気がする



それなら覚めないでほしい



目を開けるのが怖い



目を開けたらまた…

キラがいたらヤダよ



誰かが優しく私の髪を撫でる

温かい

私の好きな匂い



ゆっくり目を開けた



「…起きた…?」



優しい声に安心する



ベッドの上

目が合う



私を撫でたその手は

ハルちゃんだった



「…うん…
ごめん…私も一緒に寝ちゃって…」



「寝返りしたらいて、ビックリした
痛くなかった?」



「うん…
怒んないの?」



「なんで?
眠かったんでしょ」



眠かったんじゃない

怖かった

不安だった



「んー…
怖い夢をみたの思い出した」



「どんな夢?」



どんな…



「…キラが…キラが出てきた」



「…」



ハルちゃんが黙った



キラの名前をハルちゃんに出すのは
なんか複雑だ

ハルちゃんもいい気はしないと思う

私の好きだった人だし

ハルちゃんの弟だ



「ハルちゃん、ごめん…ね…」



「何に対しての、ごめん?」



「なんだろう…」



「まだ、アイツのこと…好きなの?」



ハルちゃんにそう言われて
胸がズキッて痛くなる



「好きじゃない!
絶対、好きじゃない!」



それは迷うこともなく即答できる

ハルちゃんに疑われたことが嫌だった



「そんなムキにならなくてもいいよ」



ハルちゃんは落ち着いてる

大人の余裕?



「本当にもぉ好きじゃないよ
私はハルちゃんが…」



「無理に…いいよ…」



ハルちゃんが私の言葉を遮って言った

私に「好き」って言わせなかった



「ハルちゃん…」



「なに?」



さっき私を撫でてくれた優しい手は
いつの間にか私から離れてた

同じベッドの上にいるのに
壁があるみたい



「あ…
この前のピアスして来てくれたんだ」



「うん」



こんなに近いのに…



「今日、来てくれて、ありがと」



「なんでハルちゃんが言うの?
ありがとは私が言うセリフでしょ」



「んー…
来てくれなかったらどーしよっかな…って
ちょっと焦ってたし…
今もアイツの名前が出て
なんか…余裕ない」



「え…あ…ごめん…」



近いはずなのに…

なんかハルちゃんが遠い



やっぱりキラの名前出したのは
マズかった

ハルちゃんちょっと引いてる



「無理に忘れようとしたり…
無理に嫌いになったり…
無理に好きになったり…
しなくて、いいよ」



ハルちゃんの声は優しいのに
なんか辛いこと言われてる?



「え…どんな意味…?」



「アイツのこと
まだ気になってたりするのかな…?とか
オレがアイツと双子だから
オレをアイツに重ねてるのかな…?とか
たまに考えてしまうんだ」



私がハルちゃんを
キラの代わりにしようとしてるってこと?

そんなこと絶対ないのに…

私はハルちゃんが好きなのに…



キラのことは忘れたい思い出だけと
まだ心に残ってる

それは仕方ない



でも未練とかじゃない!

ハルちゃんを重ねてなんかない!

それは絶対!



ん…?



ハルちゃん

遠回しに私をふった?



「また今年も誕生日にフラれるの?私」



「オレじゃなくて…?」



え、なにこれ?

別れ話になってない?



「私は…私はハルちゃんが好きだよ
重ねてなんかないし…
今日も楽しみにしてて…
昨日眠れなくて…
始発に乗ってきたの
早く会いたくて…
ずっと会いたくて…
昨日だってずっと…
会いたかった

ハルちゃんに会いたい

ハルちゃんに…

ハルちゃんに…ずっと…

抱きしめてほしかった…

怖い夢みて…

怖かったの

不安だったの

ハルちゃんに…

ハルちゃん…

抱きしめてほしい

私のこと…嫌いじゃなかったら…

抱きしめて…ください」



怖くて

好きだったら…って言えなかった



涙が溢れてシーツを濡らした



キラのことを思い出すよりも

ハルちゃんが私を好きじゃないとしたら
それはもっと怖いこと



ハルちゃんの手がゆっくり私の頬を包む



「嫌いなわけ…ない…」



「ホント…に…?」



「うん…」



ハルちゃんの腕が私を包んだ



「ハルちゃん…」



ハルちゃんに身を委ねる

優しくて酷く安心する



「好きだよ」



頭の上でハルちゃんの声が優しく響く



「私も好きだよ
ハルちゃんが、好きだよ」



「オレは…かなり好きだよ

ちょっとヤバイな…って…
自分でも引くくらい

どーしたら喜んでくれるかな?
笑ってくれるかな?
いつも考えてて…

嫉妬とかすると思ってなかったけど
さっきアイツの名前出て不安になった」



え、ハルちゃん

ホントに?



「大人でもそんなことあるの?」



顔を上げたら
私を抱きしめてるのは…



「あるみたいだな」



大好きな人で安心した



「ハルちゃん、かわいい」



「かわいい言うな

よかった…笑ってくれて…
かわいいよ」



ハルちゃんはキラじゃない



温もりも匂いもぜんぜん違う



ハルちゃんの抱きしめ方は
想像してたより

ずっとずっと優しかった



「誕生日おめでとう」



「ありがと
なんかタイミングおかしいね」



「あとでまた言う」



「とりあえず?」



「うん、とりあえず」



「じゃあ、私もとりあえず…
ハルちゃん、好き♡
あとでまた言うけどね」



ハルちゃんの腕がギュッてしてくれた

ハルちゃんに伝わったかな…



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