彼女が服を着替えたら
私ダメだな‥‥‥
自分のことばかり考えてて。


「東井さん、チョコレートもう一つ
 もらってもいいですか?」


『ん、いいよ、はい』


銀紙に包まれたままのそれを
受け取ると手首を引いて
一緒にしゃがんだ東井さんに
思い切り抱きついた


デスクは入り口から影になってるから
誰にも見えないこの場所で、
私は初めて自分からキスをした。


「東井さん、ごめんなさい。
 私頑張りますね。だから‥‥」


『奈央‥‥口開けて』


「ンッ‥‥ハァ‥‥」


いつも真面目で冷静な東井さんが
仕事場でこんなことするなんて
いつも通りじゃないのに、
気付けなかった自分が嫌になる


チョコレートの甘さと唾液が混じって
今までで一番甘いキスをした後
とろけた私の顔を見て、東井さんが
嬉しそうに笑っただけで幸せになってしまう


「東井さん‥‥お疲れ様です。
 頑張りましたね。」


もう一度薄い唇に軽く触れると
大好きな腕に抱きしめられた


単純なのかもしれないけど、
苦手なことでも誰かのために我慢して
頑張れるってすごいなって思う
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