彼女が服を着替えたら

いくら暗がりでも、
倉庫の前は街灯が多くて
泣き顔が一目でバレてしまいそうで
ボサボサの髪をあえて下ろしたまま歩き始めた。


同じ仕事場の人にこそこんな顔
見られたら来週から気まずいの一択だ。


東井さんは直属の上司になるし、来週も
必ず顔合わせることになるからダメだ。


『待って!』


えっ?


上着の上から手首を掴まれて驚くと、
すぐそばまで東井さんが来ていて
振り返った後に街灯で顔が見られると思い
すぐにまた俯いた。


なんで追いかけてくるの?‥‥‥


そんなにしっかり話したことがない相手だけに、
足を止めるもどうしていいかが分からない


『ごめん‥‥でもやっぱり
 見てないフリ出来なくて‥‥』


やっぱり見られちゃったよね‥


相当泣いたけど、化粧なんて大してしてない
顔は既に酷いことになってるはずだし、
さっきばっちり目があってるから
バレてるかなとは思ってたけど。


あのまま戻らずに歩いて帰ってれば良かった‥


家はすぐそこだし、
その方が誰にも見られずに済んだのに
ここに来たことが失敗した。


「すみませんっ、本当に大丈夫なので
 東井さんが心配することないですよ。」


『じゃあその顔で彼氏に会いに行くの?』


ドクン
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