彼女が服を着替えたら

番外編 彼女が着替えたら


小さい頃から女の子なら絶対に一度は夢見る
自分の理想の花嫁姿


どんな形のドレス?

髪型はどんな形?髪は長い?

式場はホテル?それとも海沿いのチャペル?


過去の恋愛に失敗ばかりしてきて、
一度は夢見てきた花嫁に、
自分はもしかしたら
なれないのかもしれないって思った20代


そんな絶望の日から
ハルと出会って付き合って2年


31歳の終わりを迎える前に、
とうとうこんな私にも憧れだった花嫁に
なれる日がやってきた



『とてもお綺麗ですよ。
 新郎様がお待ちなので、行きましょう。』


一生に一度のこの姿を鏡越しに見つめた後、
プランナーさんと一緒にハルが待つ場所へ
ゆっくりと歩き出した


重たくて一歩いっぽがとても大変だけど、
今日だけしか変身できない自分で
自信をもって会いに行きたい



『こちらでお待ちです。
 奥様がそばに行き合図すると
 旦那様が振り返って初めての
 ファーストミートとなります。
 私達はここで待っていますので
 お二人でご対面なさってくださいね。』



キイッと大きな扉が開くと、
ステンドグラスから光が差し込み
真っ白な美しいチャペルに向こう側を向いた
ハルとプランナーの方がいて、
私に気付くとプランナーさんは頭を下げて
今私が入ってきた場所から外へと
出て扉を閉めて行った


淡いブルーグレーのタキシードに身を包み
私に背を向けて立つ愛しい人に向かって
重いドレスと共にゆっくりと近づく


神聖な美しい道を迷いなく歩きながら、
私達が始まった日のことが
走馬灯のように沢山映し出されていく



私を選んでくれた人

私が選んだ大切な人


この選択が今まで生きてきた中で
1番自信を持って選べたことでもある


立ち姿が綺麗な彼のそばまで来ると、
そっとその肩に手を触れさせて
トントンっとゆっくり動かす


振り返った瞬間に見た愛しい人の顔が
一生忘れることはないだろうと思うほど
幸せな表情で、ハルに向かって私も
幸せだよと伝わるように笑った



『‥‥綺麗だ。』


「ありがとう‥ハルも素敵だね。」


あなたと出会えなかったら、
オシャレをすることもしなかった。


ハルと生きていくと決めたから、
こんなに素敵なドレスに身を包んで
見てもらうことが出来た。


工場の繋ぎ姿から出会った私達だけど、
今、誰よりも本当に幸せです。


もう一度恋をして良かった‥‥
その相手が東井 晴臣で良かった‥‥



『奈央、フライングしていい?』


顎を捉えた彼がそっと近づいたので
私から触れるだけのキスを落とすと
2人で笑ってもう一度深くキスをした


これからもあなたのために何度も
可愛い姿を見せるから楽しみにしててね‥



彼女が着替えたら

happy end
< 165 / 169 >

この作品をシェア

pagetop