彼女が服を着替えたら
ガチャ


『どうぞ。』


「‥‥お邪魔します。」


荷物を運ぶ槙さんは
ここに何度も着てるのか、靴を脱いで
さっさと部屋の奥に行ってしまった。


わたしの1LDKのマンションとは違って、
玄関だけでも既に広いと感じる場所に
遠慮がちに足を入れると、
背後でドアが閉まって鍵がかけられた。


はぁ‥‥

わたし何してるんだろう‥‥


休みの日に会社の上司とその友人と
仲良く料理教室なんていうプランなかったよ‥


あの後も両手に素敵なお花状態で
歩いてくる人の熱い視線が
すごく怖かったんですけど‥‥


『甲斐田さんスリッパどうぞ。
 手洗いはそこの洗面所使ってね。』


「あ、あの、東井さん?本当に
 わたしがいてもいいんですか?」


あそこで出会ってなかったら
完全に二人でやる予定だったのでは?と
邪魔をした気分になってしまう。


『むしろ一緒にやりたかったから
 嬉しいよ。槙の料理は本当に
 簡単でおいしいから勉強になるよ。
 遠慮せずにどうぞ。』


それはそうだけど‥‥

清香に言われた女気がないとか、
女子力が足りないとかが
妙に胸に突き刺さる
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