彼女が服を着替えたら
広い座敷を貸切にした居酒屋で、
長テーブルの1番端に座り、
上座の1番遠いところで飲んでいる
東井さんになんとなく視線が向かってしまう


本当に仕事でもオフでもみんなに
脇隔てなく優しく笑う人だな。


職場でもこういう席でも、
やっぱり東井さんの周りに
人が集まるのが良くわかるくらい
空気感が柔らかいんだよね‥‥


サバサバしすぎている私には
可愛くお酌の一つもできないけど、
前よりもこういう集まりが嫌じゃないのは
東井さんがいるおかげかもしれない。



『あら、甲斐田さんお酒空よ?
 もっと飲んでね。』


「あ、ありがとうございます。」

事務員で結婚されている橋本さんが、
手際よくみんなにお酒の注文を聞いてくれ
ていたので、変わりにやりますと立ち上がり
一人ひとりに聞いて回ることにした。


年下でましてや女なのに
こういうことに気が利かないって
いつも反省するから、今日はなんとなく
頑張ろうと思えた。


えっと‥‥生が8つとレモンサワーが1つ、
カシスオレンジとハイボールが3つ‥


『甲斐田さん、俺も生一つお願いできる?』

「あ、、うん生一つね‥」


あ‥‥しまった‥‥
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