彼女が服を着替えたら
「も、もしもし、ハルどうしたの?」


『(奈央にメールしようとしたら、
 同じタイミングでメール来たから
 電話してみた。)』



同じタイミングなんだ‥‥
バカみたいにそれだけで嬉しくなるなんて。


金曜日のこの時間は最近ずっと一緒にいたから
ハルも気にしてくれたのかな‥‥


いつもより少し低く聞こえる
電話の声が耳元をくすぐる。


「槙さんとこ来たよ。」


『(分かってると思うけど飲みすぎるなよ?
 槙そこにいたら電話変わって。)』


槙さん?


ちょうど裏から美味しそうな前菜とお酒を
持ってきてくれた槙さんに
東井さんからってスマホを渡すと
何やら二人で話していたので、
先に頂くことにした。


『ん、分かってるって。はぁ?‥うん、
 あ、そう。
 奈央ちゃんに変わるね。』


「もしもし」

『(奈央)』

「ん?なに?」


『(今日帰り危ないから、
 早めに気をつけて帰れよ?
 俺の家のほうが近いからタクシー使って
 泊まるって約束して?)』


こんなに離れてるのに、
また私のことばっかり心配して‥‥
ハルは相変わらずだね‥‥


「ん、分かった。約束する。
 うん、じゃあ気をつけて残りの仕事も
 頑張ってね。」


まさか声が聞けるなんて思ってなかったから
ここにはいないけど、嬉しくなる
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