彼女が服を着替えたら
槙さんは小さくクスっと笑うと、
多分真っ赤になってるだろう私に、
おかわりのお酒を出してくれた。


『俺から見た奈央ちゃんの第一印象は
 目が死んでた。今までラクに
 生きてきてないんだろうなって。
 でも、臣と一緒にいるようになってからの
 奈央ちゃん、どんどん綺麗になってるし、
 自然で楽しそうに見えてきた。』


綺麗?私が?


慎さんはよく見てくれてるから
すごいなって思う反面、
心の中を覗かれてる気がして少し怖くなる


私だってついこの間やっと
ハルに向けていた気持ちが友達を
とっくに超えていたことに気付いたばかりだ。


「私‥‥今まで恥ずかしいんですけど、
 ロクな恋愛してこなかったんです。
 ここに前来てた元カレも結婚してるって
 知らないくらいで‥‥。
 東井さんと出会って、初めて作らない
 自分でいられてることはとっくに
 気付いてたんです。
 でも‥‥‥失うのがツライって思えるくらい
 大切になりすぎたから、せめてこのままで
 いたいんです。」


『奈央ちゃんはそれでいいの?』



ドクン


「‥‥‥はい。東井さんのこと
 大切だから誰よりも幸せになってほしいし、
 友達としてちゃんと応援したいって
 今は思ってます。」
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