振り向けば、キス。
「いやや。面倒くさい。断る」

「そう言わずに何とか!話だけでも聞いてくださいっ」

「楓!」


 必死の頼みも瞬時に切り捨てられた。しかもあくびまでされてしまった。興味どころか、まったくの無関心だ。

 氷沙のパンチが飛び出したが、楓はそれを器用に交わした。そして、


「話やったら、さっき氷沙に聞いたよ。
放火魔の疑いをかけられてるんやろ?
放火した家の人にはばっちり顔を見られてて、あんたが犯人やって言われた。
せやけど、自分はその家に放火した記憶もなければ、その辺りをうろちょろしてた記憶もないっちゅーにゃろ。
まぁでも、幸い小火ですんだみたいやし、厳重注意ってことになったんやろ。
それやったら、もうえぇやんけ。
嫌なことは忘れて、おうちで寝とき」

 
 と、さも面倒くさそうにスパッと言われてしまって、高原は固まってしまった。


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