振り向けば、キス。

「氷沙、波樹!そっから一歩も動かんとってや!」


楓の声。波樹に座り込んだまま抱きしめられた。

絶対に大丈夫。そう囁かれて。

ああ、もう。嫌だ、自分が弱すぎた。


「――これで仕上げや。……もう、大丈夫やからな、氷沙。悪かったなぁ、怖い想いさせてもうて」


2人のもとに辿り着いた楓は、珍しく息が上がっていた。

いつも汗すらあまりかかないイメージがある、と言うのに。


「大丈夫やよ」


自分のそんな視線に気がついたのか、楓がにこっと笑って、頭を撫でてくれた。

こんな状況なのに、気持ちいいと感じてしまった自分が、なんだか場違いに思えた。

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