振り向けば、キス。
術の代償は、魔力だ。

強大な術を行使しようとすればするほど、術者の魔力がものを言うようになる。

時として、身の丈にあっていない術を発動すると、その術に己が食われてしまうことさえある。


――楓、万物はすべて、何かを手に入れようと思うならば、代償が必要になるんや。
そのことを、忘れたらあかん。あんたは、いずれは天野の頂点に立つ人間なんやからな。
どんなときでも、おごることなく、真理を見極めて、生きていかなあかんよ――


くどいぐらい言い聞かされた、台詞は嫌になるほど楓の体内にしみこんでいて、時々幻聴のように蘇る。


自分にそう告げるのは、年の離れた姉だった人だ。

その人を、『姉』だと思ったことは、今では遠い昔の話だ。



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