振り向けば、キス。
今から、自分が行なうのは、巨大な術式だ。
自分ひとりの力で、これをやるのは、もしかしたら無謀なのかもしれない。
それでも。
ここを切り抜けるために。
氷沙を守るために。
それは必要なことだ。
――あんたは、天野を統べる器なんやから、それを忘れたら、あかん。
『姉』の声が、嫌いだ。
いつだって、無慈悲に響く、その声が見ているのは。弟ではなく、強い力を持った、天野の後継者としての自分でしかなかった。
そんな『姉』は嫌いだった。
――俺は、俺や。俺の、意志で俺は氷沙を守る!