振り向けば、キス。
――でも、結局、と言うべきなのか、望み通りと言うべきか。
氷沙はこの時、楓の言葉の続きを聞く事が出来なかった。
意識が急に朦朧としてきて、あやふやになる。
――何、これ――?
今日の昼間感じたものと同一の、邪悪な匂いがした。
――かえ、で……。
そこに、最早馴染み深い楓の魔力の気配が混じる。
いつもとは違い、酷く揺れて、不安定な楓の力。
無理しないで。
そこまで思って、氷沙の意識は完全に闇に堕ちていった。