振り向けば、キス。


「――楓、どうするつもりだ?」

水上の声が聞こえて、楓は顔を上げた。

いつの間に自分の部屋に入ってきたのか、常日頃より少し険しい顔で、入口に佇んでいた。

その傍で水竜が心配そうにおろおろしているのが見えた。


「――申し訳、ありません。

氷沙は必ず、私が連れて戻ります」


その場で楓は土下座した。

――氷沙を守れなかった。


楓自身の思いも切なかったが、これは明らかな自分が課せられていた任務の失敗でもある。

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