振り向けば、キス。

「――楓。お前が良くやってくれているのも承知だ。

だから氷沙を無事に連れ戻ってくれたのなら、何も言わん。

しかし、もし氷沙に何かあれば、その時は責任を天野でとってもらうよ」


「――」


「―――頼んだぞ、楓。お前だけなんだ、氷沙を助けてやってくれ」


水上は土下座したまま、顔をあげない楓の肩をぽんと叩くと、水竜をも置き去りにして部屋を出て行ったようだった。

それでもしばらく楓は顔を上げることは出来なかった。


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