振り向けば、キス。
いつもの冷静な(というか、何を考えているのかイマイチ分からない)鉄火面を崩して、鬼の形相の桃に迫られて、桜は思わず叫んで、そして怒鳴り返されたと言うわけだったのだが。


「いやいや、ありえへんやろ!?なんなんこれ!?」

疑問を叫びながらも、とりあえず指示された屋敷の西側へと向かう。柚は楓の実妹で、まだ小学校6年生の少女だ。1人きりでは頼りなさ過ぎる。


――それに、柚は本家の一番良い血筋の子にしては、力が弱い。


走り向かう先から、幼い悲鳴が聞こえる。まだ元気そうだから、そこは安心ではあるけれども。


悩んでいる暇も無いな。



―――これは、いったい何の序章や?

桜の胸をよぎるのは、不吉さだった。

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