振り向けば、キス。

②それでも私は逃げられない

「はぁ。またやっちゃった……」

 楓と、波樹。ついでに高原を家から追い出したとたんに、氷沙は先ほどまでとは比べ物にならないような、どんよりとしたため息を漏らした。


「何でいっつもあんなきついこと言っちゃうかなぁ」


 本当は、もっと優しくしたいのに。弟に対しても、楓に対しても。

 高原の身が心配なのも確かだ。

 けれど。


「楓が、自分の力を見世物にするようなことが、嫌いだって。私が一番理解してたいのに」


 出来ないのはいつだって自分だ。
 
 結局いつも自分は、楓に大切にされていると言うことに胡坐をかいているのだろう。
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