振り向けば、キス。
――もう、なやんどる時間も惜しいしな、しゃあない。

楓は、波樹に関しては雨宮に任せることに決めた。
少し、水上がどんな決断をするのかは心配ではあったのだけれど。

さすがに、大事な月姫の一大事にまで、余計な思惑をぶつけて邪魔をしてくることはないだろう。楓はそう思っていた。


楓は、水上に京都に氷沙がいる可能性が高いことを伝え、そのままの足で雨宮家を発つことにした。

そのときの水竜の物言いたげな目が気になったものの、今はそれを聞く時間を惜しんでしまい、見なかったことにした。

そのときの自分のこの判断を、後々悔いることになることを、このときの楓はまだ知らなかった。


< 148 / 366 >

この作品をシェア

pagetop