振り向けば、キス。
「この空間、絶対、変だ」

――まるで、あたしの力をすべて呑み込んで、飽和させようとしているみたい……。


「やぁ、お目覚めかな?月姫」


「――あなた!」


突然の声に驚いて振り返ると、すぐ近くにその空間と同じような黒い服に身を包んだ若い男が立っていた。

その表情はにこやかだが、男が放ってくる空気は鋭利な刃物のような冷たさを持っているように氷沙は感じた。


「あなたが、最近ずっとあたしたちの周りを騒がしてた、人なの――?」


――楓はあたしには知られないうちにすべてを終わらせたかったみたいだけど。

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