振り向けば、キス。
「――まぁ、主等からしたら、そう言う事になるのかもしれないな。

ただ私は、我々の桃源郷を実現させるために、取るべき行動を取っていただけではあるのだけれどね。

――月姫。主がいとっていた、その絶大な力。主らが無駄に浪費せぬうちに、私が貰い受けてやろう」


「―――あたしを、食べるつもり……?」


氷沙は反射的に己のみを庇うように、両腕で自分の身体を抱きすくめて、身を一歩退いた。

それを見た男が、うっすらと笑う。


「―――今すぐには食らわん。今の主のような月姫のなり損ないを食らったところで、私には何の得にもならんのでな」

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