振り向けば、キス。
「月姫」である、月読みの姉と同じ胎内で育った自分の直感は、嫌になるほど当たることがある。

そのほとんどが、ろくでもないことなんだけれど。

けれど。今、ここでそれを問い詰めることは、恐ろしくて出来なかった。


「―――――わかった。俺はここに残る。その代わり、絶対氷沙と楓の無事を最優先にしてくれる?」


「そんなこと、当たり前だろう?お前は心配しないでここにいなさい。お前は、たったひとりの、うちの跡取りなんだから」



そんなこと、今まであまり言わなかったくせに。

祖父の変化の気持ち悪さも、その先に秘められた思惑も。水竜の不安に満ちた瞳も。

そのすべての答えを、知りたくはなかった。

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