振り向けば、キス。
それは、甘い毒にも似た囁き。


氷沙が思わず立ち止まった次の瞬間、氷沙の目の前に突如現れたのは、血に塗れた双子の弟の姿だった。


「、なっちゃん!?」


「……氷沙、俺…もう、だめっぽい……。助けて、」


暗闇に崩れ落ちたまま、波樹が言う。その声は苦しそうで、音は濁っていた。


「なっちゃん、」


近づこうとするが、いつのまにやら2人を先ほどからずっと自分を追いかけてきていた化け物たちが取り囲んでいて、なかなかそれは叶いそうになかった。

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