振り向けば、キス。
「―――正直、俺はそんなことどうでもいいねん。
俺は、氷沙に害さえないって言うんやったら、ほんまにどうでもええねん。
俺が、お前のためになんかをしたらなあかん道理はないやろ」


 そう。自分には少なくともそれがすべてだ。早く雨宮神社に戻ろう。そして、適当に氷沙を言いくるめて――。波樹のご機嫌も直してやらないと。


 そして。いつもどおりの日常に戻っていくはずだった。


 高原と、何か言いたそうな波樹をその場に残して、楓はもと来た道を戻ろうと背を向けた。


 そのとき。



「楓!」


< 19 / 366 >

この作品をシェア

pagetop