振り向けば、キス。

②泣きたくなる空

**

「――楓、月姫はきっと次の満月までは無事や。やからあんまり焦ってつっこまんといてや」


「……さっきと言っとること違うやないかい」


山の目指していた頂上についた途端、背後から桜の低い声が聞こえた。

登るさなかで散々消滅させた悪鬼たちの姿は、今この頂上にはなかった。


唯あるのは、自分たちの少し上空に浮かぶ黒い雲のような物体だけだ。
そこから隠しても隠し切れないような、強すぎる力があふれ出してきている。

そのあまりにも強い力は、『天野』で生まれ育ち、相対する力を持ってきた自分たちには、合わないもので、感情とは裏腹に体力を削り取られそうになる。
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