振り向けば、キス。
――きっと、あの中に氷沙がおる。
そう思うと、何の勝算もないというのに心が逸る。その自分の余裕のなさを指摘してくれている桜の存在は、ありがたかった。
「大丈夫や。あの嬢ちゃんのほんまの力、おまえ目覚めさせとらんやろ?せやけど、敵ははんまもんが欲しいはずや」
「当たり前やろ、あんな物騒な力、氷沙は持たんほうが幸せや」
ぶすくれたようにそう返すと、桜は笑って、俺の頭を撫でた。「まぁ、天野にとってもその方が好都合やろ」なんて言いながら。