振り向けば、キス。
――せやけど、俺が思ってるんは、違う。
唯、氷沙にこれ以上重いものを背負ってほしくなかっただけだ。
できれば、少し霊力が強いの。そんな少女の人生を送ってくれれば、と思う。
氷沙が月姫でなければ、自分たちは、けして出逢うことはなかった。
だから、氷沙が月姫であることも、自分が天野であることも後悔していないというのも、事実だ。
でも、それでも。月姫である氷沙が、少しでも幸せに生きてくれたら。
その隣に自分はいることは出来ないけれど。
そのためにも。
「先がすべて分かってまう、なんて、そんな力。氷沙を不幸にするだけやわ」