振り向けば、キス。
③ひきよせられるんだ、唯それだけ。
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「あれれー?君が噂の今度の月姫ちゃんやんね?」
黒い異空間に響き渡った、やけに陽気な声。
その声は声変わり前の少年のような高さを伴っていて、それに吸い寄せられるように、氷沙の中に温かい綺麗なものがにじみ出てくる。
そしてやっとリフレインし続けていた、破滅への幻影から己の意識が浮上できたことに、氷沙は安堵した。
それでも、目の前にいるその声の主を見ることはまだできない。意識はどこかうすぼんやりとしていて、身体はがくがくと震えが止まらなかった。