振り向けば、キス。


――怖い、


映像が見えなくとも、何度も頭が勝手に自分の中で再生し続けている。自分の所為で、大切なものすべてが無くなっていくそんな虚無感と共に。


――怖い、怖い。嫌だ。


あんなのはいや。


でもそれは、幻影ではあるが、事実でもあった。


――お母さん、お父さん


大好きだった。優しかった綺麗な母も。小難しげな顔をしているくせに、しょうもない駄洒落を言っては自分たちを笑わせる父も。

なのに、今はもういない。
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