振り向けば、キス。

「僕は、楓様に出逢ってから、天野の傍で千年生きた。
今まで現れた7人の月姫は全員知っとるよ」


「楓様って、楓のことじゃないよね?」


そうだろうとは思うものの、氷沙は確認する。

瞬きすれば、その振動が伝わりそうな程、近くにある朱雀の幼いはずの顔が、昔を懐かしむ老人のような表情をつくる。


「――――せやよ。
楓様は、僕が初めて平安の地で逢った楓様以外にはいはらへん。

いくら名前が同じやったとしても、あの子は楓様やない」


朱雀がふぅと息を吐いた。

その吐息がくすぐったい。


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