振り向けば、キス。

慌てている氷沙の様子に、横で朱雀が面白そうに笑う。


「大丈夫。これは僕の記憶の中の世界やから。
君は何にも関われへんよ」


危害を加えられることもないが、自分たちが、何かにしてやれることもない。


「……そっか」


氷沙はその言葉に、これから自分が見るだろう景色を思って、複雑な心境になる。


今までの、月姫―――。

どんな人生を歩んだのだろう。自分の運命ではなく、『月姫』に翻弄された人生だったのだろうか。

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