振り向けば、キス。

「彼は月姫と恋仲やったわけではないよ。
まぁ、彼が月姫のことを好いてたんは確かやと思うけどね。
身分違いの恋やて、端から諦めとったから」


「………そうなんだ」


胸が痛む。きっと、思い出したからだ。
楓の、どこか一歩引いて自分に接している態度を。

楓は、絶対にあたしのことを女として、見てはくれないから。
それは頑ななまでに。



「彼女の名前はゆき。
雨宮の二代目の長女や。記録上、彼女が雨宮に現れた、最初の月姫とされとる」


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