振り向けば、キス。

「……、で、これが最期。当時の2代貴族の内紛に巻き込まれて、ゆきは殺された。
ちょうど、雨宮の2代目が取り入った天皇が、亡くなられた年でもあったから、庇護を求めることも、できひんかった」


 今度、氷沙が居たのは、凍えるように寒そうな、凍てついた山道だった。

 朱雀の記憶だから、氷沙は寒くはないはずなのに、心から冷えそうな心地になる。


 山道に、倒れているのは2つの黒い影だった。


「最後は、ゆきは貴族の報復を恐れた雨宮にも捨てられてもうてた。せやけど、この付き人やった男は、最期まで、ゆきの傍に居った。
 ……貴族の追っ手から、逃げられるわけはなかってん。そないなことは、2人にも分かってたはずや。そうやったとしても、この2人には手に手をとって、逃げる以外の道はなかったんやろう」

< 264 / 366 >

この作品をシェア

pagetop